日本マイクロソフトが働き方の改革の一環として週休3日を2019年の夏に取り入れました。そして、その結果に対してはプラスの効果が大きかったようです。
なぜ週休3日で生産性4割も向上?企業文化まで変えられる?日本マイクロソフトの働き方改革にもの申す>>
週休3日制とはだいたんな試みだと思います。8月の金曜日すべてを特別休日とし、週休3日とすることで社員は短い時間で働き、よく休み、よく遊ぶことで生産性と創造性の向上を目指したそうです。その結果として、社員一人あたりの売上への貢献が40%近く向上したのだとか。
40%とはすごいですね。ほぼ1.5倍です。逆にこれまで無駄が多かったとも言えますね。ただ、週休3日のような働き方でも利益を上げることができるということは他の企業もまだまだ改善の余地があるということだと僕は思っています。
マイクロソフトのこのような働き方からわかる日本企業の目指す方向を書いていこうと思います。
マイクロソフトの働き方改革
マイクロソフトの働き方改革は週休3日という大胆な方法を取りましたが、ただ休みを増やすだけでは業務が回らなくなることは目に見えています。当然、休むためには仕事を早く終わらせ、なおかつ成果も上げなければなりません。
そのためにマイクロソフトは3つのテーマを掲げて取り組んだそうです。
- 削減
- 向上
- 満足

削減
まず、削減ですが、資料の中では3つあげられています。
1つ目の就業日数は前年比-25.4%です。これは単純に働く日数が減っただけですが、割合にするとかなり減ってます。
2つ目の印刷枚数も-58.7%と大幅に削減されています。就業日数が減ったこともありますが、会議の時間も大幅に減らしたそうです。会議設定は基本30分、人数は多くて5人、コミュニケーションツールのTeamsを活用するというルールが設けられており、いかに短い時間を効率的に使おうと考えているかわかります。
日系企業の会議はとりあえず関係者を全員集めて偉い人がだらだらと話し続けるようなものが多いのではないでしょうか。僕の会社でもそんな会議がよくあります。2時間ほどの会議でほぼ何も話していないような人が何人もいるような会議は無駄でしかないと思っていました。
マイクロソフトはそのような無駄を排除し、効率的な意思決定を行っているようです。
3つ目の電力消費も-23.1%と社員がいないフロアを閉鎖することで就業日数と同じくらいの割合で電力消費を削減できたそうです。マイクロソフトくらいの大きさの規模になると相当額の電気料金を節約できそうです。
向上
働き方改革でただ労働時間を削減し、時間を浮かせても会社としての売上は伸びません。マイクロソフトの働き方改革で驚くべきところは、1日休みを増やしたのに社員1人あたりの売上が増加したことです。
前年比39.9%の上昇です。毎年社員一人あたりの売上は増加しているようですが、39.9%とはすごいです。30分会議やリモート会議、チャットツールの利用など出来る限りの方法でスムーズな意思決定を行い多くのタスクをこなしたであろうことが想像できます。
また、人材交流の割合も増えているので、新たな社員同士のつながりが増え、ビジネスチャンスも膨らんだのではないでしょうか。
評価
最後の項目は評価です。92.1%の社員が今回のマイクロソフトの取り組みを評価しているようで、それなりの効果が認められたのだと思います。
働き方改革という言葉を日本では最近良く聞きますが、こういった数字で表している企業は少ないのではないでしょうか。マイクロソフトの週休3日という大胆な取り組みは数字を出してかつ社員の満足度も向上するという一番いい結果を出しました。
日本企業の働き方改革の問題
マイクロソフトは週休3日という大胆な方法を取って働き方改革を進めましたが、日本企業の働き方改革はうまくいっていな会社が多いように思います。残業代がなくなって生活が厳しくなった、残業できないが業務量は変わらない、などといった現場の悲鳴は聞こえます。
ではなぜこのような問題が起こっているのでしょうか。
経営層と現場のギャップ
とりあえず経営層が働き方改革を表面的に受け取って残業時間の削減を命じてきたときは作業量も変わらず、残業代が減るだけという従業員からの不満ばかりがつのる改革になります。
トップが働き方改革を命じるのであれば、業務を効率化するためのチームを立ち上げたり、RPAなどのツールを導入するための予算を割いたりする必要もあるかと思いますが、ただ残業を減らせとだけ命じられると社員の不満はたまっていきます。
こうなるとただの残業代抑制改革です。マイクロソフトで言うと、会議時間の削減、チャットの積極利用、ツールの利用など現場も柔軟に働けるように変化していきました。このような柔軟な対応が働き方改革には求められます。
働き方改革の成果が還元されない
働き方改革と言っても残業時間を減らすことにフォーカスしても従業員は残業代が減るだけです。がんばった分だけプライベートは充実しますが、給料は減ります。
作業を効率化したのに給料は減るとなると頑張ろうと思うでしょうか。特に予定がなければ適度に残業した方が給料がよくなる歪な構造になります。日本企業は労働時間に対して給料が払われるケースが多いです。なので、効率的の働く人ほど給料が減り、仕事ができない人やだらだら働く人が多く給料を貰えるという状況は昔から続いています。
そういった状況を打破するために「みなし残業」制度を導入している企業もあります。みなし残業とは、とりあえず一定時間は残業したことにして残業代を出します。超えた分は別途出します。といった制度です。
20時間みなし残業がついている場合は、残業が毎月20時間超えない人は残業しない方が得というわけです。そういった制度で給料面を担保して、社員を早く帰らせようとしてる会社もあります。
働き方改革で残業時間を抑制するなら待遇も検討する必要があります。
早く帰ってもやることがない/もっと働きたい
中高年の世代に多いと言われていますが、早く帰っても何もすることがないから働き方改革に積極的になれないという人もいます。仕事が趣味、といった感じの人です。
もちろん、趣味なんて人それぞれですし、さらに言えば、もっと働きたいと思っている人もいるはずです。そのような人も早く帰れと圧をかけると働く意志のある人のモチベーション低下にもつながります。
こういったケースは働き方改革が残業を減らすことだけにフォーカスしているから起こるのではないでしょうか。残業を減らすことだけが働き方改革ではありません。今まであった無駄な作業や煩雑な業務を効率化し、よりクリエイティブな作業に時間にあてることを可能にすることも働き方改革の一環です。
業務を効率化し、働く意欲の高い人にはこれまで以上に成果を出してもらうことも働き方改革の意義ではないでしょうか。プライベートを充実させたい人は短時間で仕事を終えて早く帰り、もっと働いて成果を出したい人はクリエイティブな作業に時間をかけて成果に繋げる。それぞれの働きたい働き方にフォーカスすることも働き方改革ではないでしょうか。
無駄を削るだけでなく生産性の向上にフォーカスを
ただ業務を効率化して早く帰りましょう。生産性をあげて早く帰りましょう。そういった話をよく聞きますが、結局、新たな価値を生み出さない限りは限界を迎えます。お金を節約しても残せる金額に限界があるのと同じで、働き方改革での時間の削減にも限界があります。
限界を迎えないためには新たなことに挑戦するか、より価値のあるものを生み出さなければなりません。そうなった場合、早く帰るだけではいけないと僕は考えています。
もちろん、無駄な作業で残業というのは減らすべきですが、余った時間をプライベートだけでなく自分自身の能力アップに繋げられない場合、働き方改革は真に成功したとは言えないのではないでしょうか。
働いた時間に対価が払われるような職種もあるので、一概にすべての人が同じ働き方をするのは不可能ですが、働き方改革をする際は個人の能力アップという点にどれだけ力を入れられるかが今後の企業の成長を左右すると思います。
浮いた時間を少しでも自己投資に使うと未来が大きく変わると僕は思っています。自分への投資をする時間を得られるのが働き方改革ではないでしょうか。