叩かれがちなSIerの仕事内容について語る

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最近、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)の凄まじい伸びや、Web系企業の伸びが顕著で、ベンチャー企業を目にすることが多くなってきた気がします。
そして時代をどんどん切り開いていく彼らと比べ、「日本の大企業はダメだ」と叩かれることが多くなってきました。

僕もどちらかというと叩かれる側の日系大企業に分類されるSIerで働いているので、どんな仕事をしているのか、問題のない範囲で書いてみようと思います。

ちなみに、大手企業の退職エントリが最近話題になってますが、僕の会社も概ね似たような症状が起こっていると感じています。色んな会社の退職エントリを見てみると内情が見えておもしろいかもしれないですね。

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退職エントリを読んでいると、いろいろ思いを持って退職される方が多いみたいです。成功している人は上昇志向が強く、違うフィールドを求めて転職して、転職先でも満足の行く生活を送っているようです。反対にマイナス面から脱するためだけに大手企業を辞める人は失敗しがちに感じました。


そんなSIerがどんな仕事をしているか、現職SIer社員の僕が書いていこうと思います。

SIerの仕事内容

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SIerについて

SIer(エス・アイアー)ってそもそも何の略かというと、System Integratorの略です。簡単にいうと、顧客の課題をシステムで解決する仕事です。

SIerで働く現場の人間は、主に営業とSEになります。SEはシステムエンジニア(System Engineer)の略で、実際にシステム開発に関わる人間です。

SIerにもいくつか種類があって

  • ユーザー系
  • メーカー系
  • 独立系

が代表的なものであります。

ユーザー系とは簡単に言えば親会社のシステム会社です。「〇〇システム」って聞いたことありませんか?システム子会社みたいなところです。親会社のシステム開発がメインになるため、社内で仕事をすることが多いです。親会社から要望があるので仕事を取りに行く必要は殆どないと思います。規模の大きい会社の子会社的なポジションのところが多いかと思います。

メーカー系とはPCやサーバーを作っているメーカーのシステム部門のようなところです。基本的にサーバーやPC、ネットワークは自社製品で揃えられるのが強みです。すべて自社製品なのでトータルサポートが可能になり、社内で全てを完結させることができるのが強みです。

最後に独立系です。名前の通り独立したシステム会社になります。メーカー系とは逆に、使用する機器に制約がないので最適な組み合わせでシステムの構築が可能になります。最近はハードが海外メーカーの方が安く品質もいい、なんてことにもなってきておりクラウドの普及もあるので独立系SIerも勝負しやすくなってきたように思います。

仕事の流れ

主にSIerの仕事は受託開発となります。受託開発というのは顧客から、「こんなことがしたい」「こういったシステムを入れたい」「古くなった機器を入れ替えたい」などの要望に対して競合他社とコンペなどを行い勝利した企業が受注し、顧客と合意した仕様でシステムを作るというものです。

システムの開発は「ウォーターフォール型開発」がメインになります。「ウォーターフォール型開発」とは名前の通り、上流工程から下流工程まで滝が流れるように開発するモデルで、上流工程で決まった仕様に基づき下流工程が着手されます。基本的に上流で決まった仕様が変わることはありません。(ここで詰めが甘いとバグや顧客とのトラブルのもとになり、いわゆるデスマーチの原因になります。)

そして上流工程は何をしているかというと、主にシステムの仕様決めです。どのような機能がほしいか、実際に業務を行う際に問題はないか、システムのレイアウトはどうするのか、レスポンスはどの程度の速度が必要かなど、実際にユーザがシステムによってどのようなことをしたいか決めていきます。


ユーザの業務をしっかりと落とし込み、どのようにシステム化して運用していくのかも考えながら仕様を決めていきます。会社の基幹システムの構築となると経営層、現場、間接部門、顧客の顧客などステークホルダーが数多く出てくるので、経験が浅い人間には厳しいかもしれません。

ちなみに、顧客の規模が大きくなるほど業務が縦割りになったり、他の会社のシステムの関係が意味不明だったり、そもそもなんのための業務かわからないようなものが出てきたり、仕様を決めることに右往左往することになります。

IT土方の闇は深いです。



次に下流工程はどのようなものかというと、決まった仕様に基づいてプログラムを書いたり、テストを行いバグがないようにします。中堅以降のSIerやソフトハウスなどがこの工程を担当します。

大手のSIerはたいてい手配師なので上流工程で決まった仕様を協力会社に投げて終わりです。出来上がるまでは進捗確認と上司への報告をメインに行なっています。

顧客からの急な仕様変更を協力会社に伝えたときのヘイトや、スケジュール通りに行かない焦りプレッシャー、上司と顧客に挟まれるストレスなどで精神を病む人も少なからずいます。

気が弱い人には向いていないかもしれません。

そんなこんなで大手企業のSIerは上流工程の仕様決めとスケジュール調整をメインに行なっています。仕様が決まったらあとは協力会社の管理です。

ちなみに、Sierが「IT土方」などと揶揄される原因はここにあって、大手SIerが元請けになり、開発を開発会社に丸投げしているからなんですね。建設業のように多重下請構造になってしまいます。僕の会社も管理業務や顧客との調整、社内での説明に翻弄されている人が多くいます。

SIerについて調べるとプログラムが書けず、Excelとパワポしか出来ない人が多い、みたいなことが書かれている記事が見つかると思います。管理業務や社内調整ばかりをしている人が歳を取ったらどうなるかわかりますよね。

プログラムもまともにわからない、最新技術を学ぶ時間は管理業務や社内調整にとられて取れない。気がつけばExcelとパワポしかできないおじさんの完成です。

そんな人が舵をとってシステム開発を進めるもんだから、批判されるようになるのも当然ですね。

正直、上で書いたような状況ですから、大手SIerの仕事の8割は勉強すれば誰でもできます。

富士通の事例を見れば明らかですね。

富士通、配置転換5000人規模 ITサービス注力で
富士通は26日、2020年度をめどにグループ全体で5000人規模を配置転換する方針を示した。対象は人事や総務、経理などの間接部門で、成長分野であるIT(情報技術)サービス事業に振り向ける。非中核と位

間接部門を配置転換で営業、SEにすると。これって誰でもできますよって言ってるよなもんですよね。つまりそういうことです。


ちなみに、そんなExcelとパワポをいじっているだけの手配師が一番儲かっているのもSIer業界の闇が深いところです。

品質確認

なんだかんだで最後に責任を取るのは元請けのSIerです。なので、品質確認は徹底的に行います。そこまで見るのかってくらいテストすることもあります。元請けのSIerで残業が多い理由の一つがこれです。テストの仕様書作成やテスト実施、テスト結果の確認に時間を取られ、夜中まで働いているなんてことがテスト工程では多いのではないでしょうか。

僕の同期はテストで似たような作業を夜中まで毎日淡々とやり続けていたストレスで手が震えだすという症状が出たそうです。

正直、もっと効率化できないのかという疑問は感じますが。なんせテストツールの仕様とかできないですからね。コードが読めない、書けないなのでテストコードもなしです。ひたすらテスト環境を動かし、画面を操作、結果のハードコピーをExcelに貼っ付ける。これを繰り返します。

僕はこの作業をやったときに辞めたくなりました。単純作業は人間のメンタルを蝕みますね。

まぁ、そんな人力作業で確認を行っているので上流工程がしっかりしていれば、バグのないシステムを作り上げられます。上流工程での矛盾がテスト中に見つかるものなら悲惨ですね。はい。

お察しの結果になります。

元請けのSIerの残業時間

SIerの技術職に該当するのがSEですが、SEは一般的に残業が多い職業と思われがちです。実際に残業時間が長いかというとプロジェクトの状況や工程によっても異なります。

僕自身は残業時間はかなり少ない方で、毎月10時間前後です。だいたい定時か、1~2時間くらい残業して退社という流れです。8時を過ぎることは滅多にありません。

残業の量を工程ごとに分けて説明します。

  • 上流工程
  • 下流工程
  • 本稼働

この3工程で分けます。

上流工程

上流工程は顧客とシステムの要件を決める工程です。基本的に仕様をまとめる打ち合わせを客と行うことがメインになるので、作業としては打ち合わせの資料作りや検討するシステムの仕様をまとめたりといったことを中心に行います。

なので、残業量としてはそこまで多くならないです。

プロジェクトや業務の規模によりますが、数ヶ月以上行うことが多いと思います。元請けSIerが一番頑張るところです。

下流工程

上流工程で決まった仕様で下請け企業に開発を委託する工程です。やることとしては進捗管理とできたプログラムが仕様どおりになっているかのテスト、顧客との進捗打ち合わせなどです。

開発が一番ハードなのですが、元請けSIerは手を動かすことはないので基本的に暇です。

ただ、テスト工程になると場合によってはメチャクチャ忙しくなります。

理由としては大きく2パターンです。進捗が大幅に遅れているか、バグが発生して収束しないときです。どちらも納期が近くなるとデスマーチなんて言われる死の行進が始まります。終わりは決まっているのでどうにかしてその日までにシステムを動くようにして作り込まないといけません。

当然、今までの人数では対応できないの多くの人間が投下されますが、現場を詳しく知らない人間が入っても正直あまり役には立ちません。現場を知るには時間がかかるものですが、途中からいきなり放り込まれたら何が何やらわかりません。それでもやらねばなりません。

なので、バグが無いか確認するのが精一杯です。元請けSIerはプログラムが読めない人が多いのでバグの原因が何かもよくわからないこともあります。

そんなわけで、闇雲に人を投下して犠牲者を大量に出すことになるんですね。ただ、それでもどうにかしてやり遂げることがほとんどなので、その辺のパワープレーは凄いところかもしれません。

下流工程の残業量はプロジェクトが上手くいっているのかどうかにかかっています。

うまく行っていればすぐに帰れますし、うまく行かなければ地獄を見ます。

本稼働

SEにとって一番緊張する場面です。作ったシステムが顧客の業務で使用されます。もしも止まろうものなら大惨事です。最悪、損害賠償なんてこともあります。

例えば鉄道のような大多数の人が利用するシステムを作っているとして、新しく作ったシステムに切り替えたときに全部の電車が止まったりしたら悲惨ですよね。

なので動き始めは一番緊張する場面です。本稼働でしっかりと動いてくれれば残業はほとんどなしで帰れます。

ただ、もしも止まろうものなら寝れなくなります。ことは社内だけの問題ではなくなります。何が何でも正常にしなければなりません。リーダーは現場からの報告を待つために深夜になってもプロジェクトルームに籠もり、上司や偉い人の対応に追われます。

現場も寝ずに原因の調査と対応に追われます。こうなると何人かリタイアすることもよくあります。途中から人数が減ったりと……。

なので本稼働は今後数週間の過ごし方が決まる瞬間でもあります。

SIerの社風

これは僕のイメージですけど、どこの会社もおとなしい、温厚な方が多い印象です。

イケイケ1割、真面目8割、変わってる人1割くらいなイメージですね。ベンチャー企業のような若くて活気の溢れた感じはありません。元請けのSIerだと平均年齢も高いので、落ち着いた方が多いのと、保守的な事なかれ主義な人が多い印象です。

僕は受託開発が故に事なかれ主義の人が多くなってしまっていると思ってます。なんせ、どんだけいいロジックやフローを考えても、顧客から支払われる金額は変わりませんからね。言われたとおりに作ればいいので、波風起こしても得することは殆どありません。問題なく仕様通りに動けばそれ以上の改善は必要ないのです。

そんなわけで保守的な人が多い印象です。あまりイケイケな雰囲気が得意ではない人にはいい環境かもしれません。

リスクを取ることを嫌う

大手SIerはリスクを取ることを極端に嫌います。デスマーチなんてなろうものなら部長やそれ以上のポジションの人間も頭を下げることになるので、上司に報告する際はまず第一にリスクについて聞かれます。

「これってリスクじゃないの?」と。

確かにリスクを潰していくことは重要です。ただ、ときに慎重になりすぎて動きが遅いこともあるので、その点は問題でしょう。一度も仕事を頼んだことのないソフトハウスとかだとかなり躊躇します。そういうところは最後の最後、どうしようもないときにしか仕事を振りません。

昔頼んだ会社がいい加減だったとか、みなさん様々な苦い経験をしているようで新たな協力会社を探すことはあまりしたくないようです。


それにしても上司への報告が多い。何回も進捗報告があり、そのために資料を作りメンバーの予定を抑えるというのはもう少し効率的にできないものかと思います。

SIerの今後について

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かなり厳しい戦いを強いられる

SIerのビジネスモデルはかなり厳しい戦いを今後強いられると思います。

SIerで売上の大部分を締めているところは金融や官公庁、大企業のシステム開発になります。

これらは一度で動く金額がかなり大きいのですが、クラウドが広く普及したことにより、基幹システムでも構築が容易になりました。今までサーバ等、機器から調達していものが画面操作のみで構築できるようになり、スピード感が増しました。

これが何故SIerの業績に影響するかというと、SIerは人月商売で稼いでいるからです。

人月商売とは、1つのプロジェクトを何人で何ヶ月かけて終わらせるか考えて金額を提示するビジネスモデルです。1人にいくらかかるか人件費が会社ごとに決まっており、大人数で時間を掛けるほど金額が高くなるわけです。

そして元請けの人件費が一番高いです。元請けのSIerは平均年収800万円を超えているところが多いので、それを支えるだけの人件費をシステム開発に要求しないといけませんから。

そして、クラウドの普及でシステム開発のスピード感は上昇しています。

例えば、サーバの調達、構築など合わせて1ヶ月で10人必要な場合、10人月分の売上が計上出来たわけですが、これがクラウド上で1人が2週間もあれば作業が完了するとしましょう。

すると0.5人月の費用しか必要ないわけです。つまり売上が1/20になってしまい、薄利多売のビジネスになってしまいます。ただでさえ変化が激しい時代で、普段の仕事もスピード感が求められているのに、クラウド化が普及し、SIerはかなり厳しい局面に立たされていると僕は感じています。

さらに、クラウドもAWSやAzureなどの外資がシェアの大半を握っており、日系企業は利用料でマージンを得ることができません。これまでのようにサーバのメンテ保守の料金も切り下げられることになるでしょう。

プログラムも読めず、Excelやパワポでのプロジェクトマネジメントしか出来ないような人はかなり危険な状況に立たされているのも事実です。

価値のあるサービスが必要

今後生き残っていくために、SIerには利用する価値のあるサービスや、頭のキレる人の魅了的な提案がないと顧客はお金を払ってくれなくなる時代が来ているのではないでしょうか。

もはやコンサルかもしれません。

また、顧客の情報部門も技術力が高い人が雇われており、そのような人が商談対応にも現れることが多くなるでしょう。となると、そのような人を納得させるだけの価格提示やスピード感が必要になります。現在の大手SIerにそのような力が残っているのでしょか。10年後、業界の勢力図がどのように変化するのか楽しみでもあります。

僕自身も力を身につけて、会社に依存しない生き方をしたいです。頑張ろう。

就活生の方へ

不安になりそうなことを書きましたが、大手SIerは待遇はそれなりにいいです。福利厚生もしっかりしてますし、新人の教育も力を入れています。(新人以外の教育が行き届いていないの問題なのかもしれませんね。)

まずはIT業界について基本的なことを学ぶのであればいい会社が多いと思いますよ。得手不得手が人にはありますから、居心地よく感じる人もいると思います。

  • まずは基本的なことを学びたい人
  • 言われたことを完璧にこなすのが得意な人

はこの業界に向いていると思います。

もちろん、変化の激しい時代なので、何が起こるこわかりません。突然の不況でベンチャー企業が軒並み倒産するかもしれませんし、逆に好景気なのに大企業の売上が振るわないなんてこともあるかもしれません。

個人の高い能力が求められる時代になっていくと僕は考えているので、頑張りましょう!

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