三井住友FG(フィナンシャルグループ)【8316】は国内のメガバンクの一角で誰もが知っている銀行の1つです。マイナス金利政策の影響を大きく受けている銀行ですが、三井住友FGの業績はどのように推移しているのでしょうか。
三井住友FGは株主還元方針として累進配当を公言している企業でもあります。累進配当は配当を維持、もしくは増配を行い続け、減配をしないということです。累進配当を公言している以上、業績には今後もかなり自信を持っていると思われます。
そんな三井住友FGの事業内容、業績、株価と配当について分析していきます。
三井住友フィナンシャルグループの事業内容
三井住友銀行でおなじみの三井住友FGですが、事業内容は大きく4つの部門があります。
- リテール事業部門
- ホールセール事業部門
- 国際事業部門
- 市場事業部門
4つの事業部門が大きな収益の柱となっており、三井住友銀行とSMBC日興証券はすべての事業部門をまたがる中心事業となっています。
4つの事業部門の純利益の構成比率はバランス良く構成されています。

4つの事業部門がいったい何をしている部門なのか、順番に見ていきましょう。
リテール事業部門
リテール事業部門は個人向けの事業部門で、銀行を始め、証券、クレジットカード、デビットカードなど様々な金融商品や資産運用、預金管理を行っている部門です。
近年のデジタル化の流れにもついていこうという姿勢もあり、パソコンやスマートフォン経由での顧客数の割合も年々増加傾向のようです。デジタル利用の顧客が増えれば現場の人件費削減にも繋がるので利益率の増加に繋がりそうですね。
ホールセール事業部門
ホールセール事業部門は国内の大企業や中小企業への資金調達、運用、リスクヘッジ、決済などのサービスやM&Aのアドバイザーなども行うBtoB事業部門です。
金融機関の代表的な部門の1つで、企業の成長のためにお金を貸し付けたり、M&Aによる事業拡大などを手伝う部門ですね。マイナス金利政策の影響を大きく受ける部門であり、景気が悪くなると大きく影響を受ける部門です。
ただ、低金利時代ながらも貸付金額は増加傾向であり、証券ビジネスが成長を見せているようです。
国際事業部門
国際事業部門はその名の通り、海外向けのビジネスを展開していおり、国外で活躍する日系企業や、日本国内に参入する外資系企業へのビジネスも行っています。
銀行、証券、リースを中心とした資金回転ビジネスを展開しており、アジアを中心に規模を拡大しています。
国内だけでは営業も厳しいものとなるかもしれませんが、海外比率も26%と日本の銀行ですが世界でも収益を上げていることがわかります。
市場事業部門
市場事業部門は金融商品を扱う部門です。外国為替・デリバティブ・債券・株式等の金融商品を最適なバランスでポートフォリオを組み、トレーディングで収益を得る部門です。
市場は数年単位のサイクルで大きく暴落したり暴騰したりするので、そういった転換期に合わせてポートフォリオを組み替える必要があります。
三井住友FGでは市場の暴落局面からの転換期で株式比率を高め、債権比率を減らし、市場の上昇局面の転換期で株式比率を減らし、債権比率を高めるといった機動的なポートフォリオの組み換えを行っているようです。
転換期の見極めは非常に難しいので、三井住友FGの市場を読む力が試されます。
三井住友フィナンシャルグループの業績推移
最近は業績があまりよくないイメージの銀行でしたが、三井住友フィナンシャルグループの業績はどのようになっているのでしょうか。
決算資料から業績を見ていくと自分の思っていたイメージとは違い、安定しているようです。



年度 | 経常収益 | 経常利益 | 純利益 |
---|---|---|---|
2014年3月期 | 4,641,880 | 1,432,332 | 835,357 |
2015年3月期 | 4,851,202 | 1,321,156 | 753,610 |
2016年3月期 | 4,772,100 | 985,284 | 646,687 |
2017年3月期 | 5,133,245 | 1,005,855 | 706,519 |
2018年3月期 | 5,764,172 | 1,164,113 | 734,368 |
2019年3月期 | 5,735,312 | 1,135,300 | 726,681 |
業績は伸びてはいませんが、安定した横ばいの模様です。マイナス金利や市場全体が低金利で推移しているなかで貸付金の金利で儲けるのは厳しくなっているようですが、証券や海外事業は伸びている傾向のようです。
また、近年のデジタル化の流れもあり、ネット銀行やネット証券の普及、フィンテックなど新しい技術やトレンドの変化も激しくなっており、三井住友FGも対応に力を入れているようです。
大企業は意思決定プロセスが多く、動きが遅くなりがちですが、社内のIT投資には年間1500億円を投入する方針のようです。そのうち、デジタライゼーションや事業革新、新規事業への投資として年間500~600億円の投資も行うと宣言しています。
IT化の流れに遅れていはいけないという意思の現れかもしれません。また、環境変化を踏まえて機動的に予算の見直しも行うようなので、今後の新たな収益源を獲得に繋がる可能性が期待できますね。
三井住友フィナンシャルグループの株価と配当の推移
三井住友フィナンシャルグループの株価はこのようになっています。
2020年3月19日の終値で2560円と大幅に下落しています。コロナウイルスの影響で経済の先行きが不透明になったことが銀行の業績に与える影響も大きくなったと投資家に判断されているからでしょう。世界的な株安が起こっているので、今後コロナウイルスの影響が収束するまで株価はどうなるかわかりません。
業績の先行きは不透明ですが、配当金は年々上昇しています。

年度 | 配当(円) | 配当性向 |
---|---|---|
2014年3月期 | 120 | 26.2% |
2015年3月期 | 140 | 32.7% |
2016年3月期 | 150 | 29.9% |
2017年3月期 | 150 | 32.7% |
2018年3月期 | 170 | 34.6% |
2019年3月期 | 180 | 35.2% |
累進配当を掲げている三井住友フィナンシャルグループですが、株価は大きく下がり、2020年3月19日終値時で配当利回りは約7%となりました。
もし本当に減配しないのであればかなり利回りのいい株となります。三井住友銀行にお金を預けるよりも三井住友フィナンシャルグループの株を買ったほうが利回りがいいという状態です。
配当利回り7%となると税引き後は約5.6%なので18年ほどで元本を回収できます。もちろん今後一切の減配がない前提ですが、かなりの高利回りです。
三井住友フィナンシャルグループは投資対象になるのか分析
マイナス金利政策の影響を大きく受け、国内での収益を増やすことはかなり難しい状況となっている銀行ですが、三井住友FGも例外ではありません。
連結粗利益の中で、国内貸出金・預金関連収益の割合は2002年度は35%だったのに対して2018年度は15%まで低下しています。ただし、貸付が低下しているにも関わらず、粗利益は年々の増加傾向です。
理由の1つとして、事業を多角的に展開しているので収益源が多様化していることがあげられます。特に海外事業の強化や証券の電子化による対面取引の減少で人件費も抑制されています。
キャッシュレス事業にも力を入れており、GMOやVISAといった大手と手を合わせることでビジネスを広く手掛けています。キャッシュレスに関してはスマートフォンをほぼすべての人が持つようになる時代となったことや、国策の一環でもあるので今後も広がっていくことが予想されます。
貸付の利ざやで稼ぐことは今後も厳しい展開が予想されますが、多角的なビジネス展開に力を入れており、ITも積極的に取り入れている姿勢から、今後も安定した業績が続くと自分は予想しています。
また、株主還元にも力を入れており、積極的な自社株買いや増配も視野に入れいているようなので投資対象としては優良な会社だと思います。
三井住友フィナンシャルグループの今後を注視していきたいと思います。