なぜシステム費用は高いのか?SIerの中の人がその理由を語ってみる

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みずほフィナンシャルグループが発表した2018年度決算は経常利益が前年度比-83.2%の965億円という大幅減益の結果となりました。減益の大きな原因としてあげられたのが、システム費用の4600億円です。

みずほフィナンシャルグループは知っている方も多いと思いますが、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行が合併してできた銀行であり、システムの統合でいろいろと揉めた経緯があります。

今回のシステムは16年かけて進めてきたものだったのですが、投資に見合う成果が得られないと判断され、4600億円の固定資産が特損で計上されました。

みずほのATMが何回も止まるとアナウンスされていましたが、あれですね。ユーザとしては不便なだけで何も変化がありませんでした。


それにしても16年で4600億円ってすごい金額ですよね。1年間で約300億円を投じている計算になります。なぜシステムにそんなお金がかかるのでしょうか?

今回はその理由についてSIerで働く僕が解説しようと思います。

システムにかかる費用が高い理由

金

これは至極単純で、ほぼ全てが人件費です。9割人件費といっても過言ではありません。

システムはプログラムとそれを動かすハードでできています。プログラムはそのままプログラムですね。ハードというのは銀行でいうとATMなどです。他にもサーバやそれを繋ぐケーブル、データを保存するディスクなどもあります。


ハードっていうのは価格が固定で概ね値段は市場に出回っているものと変わりません。そんなに高いものでもありません。

しかし、プログラムを作るために莫大な人権費がかかります。

あんなの詳しい人が書いたらすぐできるんじゃないの?

なんて思いますよね。確かにプログラムを書くだけなら凄腕プログラマーを雇えばすぐにできます。

現実はそう簡単ではなくて、お客さんからいろんな要件を聞き出して、必要な機能の洗い出しとか現行業務への影響とかいろいろと調べなければいけません。プログラマーが書いたプログラムを導入してバグが発生して動かない、とかなったら訴えられますからね。

お客さんの業務を止めようものなら会社規模によっては何百億という損害賠償になります。慎重にならざるを得ませんよね。

そのため、細部まで業務を知り、要件を引き出す必要があります。そのためにバカみたいな人件費が必要になるわけです。



みずほのケースだと4社ベンダーが関わっています。日本IBM、日立、富士通、NTTデータです。

これらの会社の平均年収はいずれも800万円前後です。つまり、1人プロジェクトに関わるごとに800万円以上の費用が年間かかるわけです。年収が800万円前後ということは、おそらく1.5倍以上の金額が1人プロジェクトに関わるのに必要になるでしょう。

ベンダーも利益を出さないといけないので、なかなかえげつない金額を提示していると思います。

正直、お客さんの仕様通りにつくるなら大手ベンダー提示額の半分くらいの金額でできるんですよね。

ただ、小さい会社に任せると何かあったときに対応できません。大手ベンダーは高いですけど、最後まで逃げませんからね。そこが高いけれどいいところでしょう。

システム開発の流れ

ならなるべく短い時間でプロジェクトを終わらせれば費用もかからずに済むよね!って思いますが、システムを作るのって結構時間がかかります。


基幹系のシステムを作るにはウォーターフォール型開発という手法を取ることが日本では今でもスタンダードかと思います。

ウォーターフォール型開発というのはその名の通り、滝から水が流れ落ちるように開発していく手法です。上流工程ではシステムの仕様を決め、下流工程でプログラムを書き、テストを行う手法です。

基本的に上流工程で決まった仕様を変更することはありません。設計書で決まったままにプログラムを書いていきます。

上流工程は大手ベンダーが担当する事が多く、プログラム開発は中小企業のソフトハウスやフリーランスのプログラマが行うことが多いです。


仕様決めとプログラムを書いている会社が違うがために、仕様の変更にかなりの時間がかかります。何か間違いをプログラマーが見つけても勝手に修正はできません。ベンダーに報告し、顧客と合意をとり、そこでやっと修正が可能になります。

仕様を変えることによる他の機能への影響も調べないといけないので仕様の変更はかなり手間のかかる作業です。


上流工程の仕様決めは一体何をするのかというと、顧客との打ち合わせで顧客の要望を吸い上げ、現行業務からの変更点や影響などをひたすらに調べ上げます。

この作業は高いコミュニケーション能力と、必要な情報を見極め引き出す能力、マネジメント能力など多くの能力が必要とされます。

これらの能力が低い人がリーダとなってプロジェクトを進めると、プロジェクトが炎上し、俗にいうデスマーチという状態になります。

みなが毎日終電で帰る日々の始まりです。システムを本稼働させるために多くの屍の山が出来上がります。そうならないために、能力の高いリーダーが必要になるわけですね。



そうして仕様を決めたあとは大手ベンダーはプログラム開発を他の会社に発注します。ベンダーは基本的に開発のマネジメントが中心ですね。彼らは基本的にプログラムは書けません。なので出来上がったプログラムの受け入れテストを行います。

何かあったときに責任を取るのはベンダーなので、このテスト作業は真剣に行われます。テスト作業はかなりの時間を費やします。テストコードも書けないので、基本的に画面を動かし、ハードコピーをエクセルに貼り付け、テストを行っていきます。

仮にテストコードを書けるエンジニアがいても、上司が理解できないので手作業を命じられます。この辺は現場で働いていて問題だと思いますね。最低限何をしているのか理解できるだけコードを読む力はベンダーも身につけるべきだと思います。


そうして泥臭いテスト作業を終えると顧客に納品です。もちろん顧客の動作確認作業もありますが、実際に本稼働するまでは油断できません。

何か仕様が漏れていたらいきなりストップということもあるので本稼働は緊張の一瞬です。

そして何事もなく動けばシステム完成です。

こういった流れでシステムは開発されています。ちなみに、稼働した後もメンテナンス費用としていくらか毎月費用を払うことになるので、このような方法でもベンダーは利益を得ています。

トラブルが発生した場合も対応に人件費はかかりますからね。そのへんは致し方なしなのかもしれません。

クラウドの採用で費用削減へ

クラウド

システムにかかる費用というものが様々な工程を経るため高くなると説明しましたが、最近はクラウドが基幹システムに使われるようになり、流れも変わってきました。

システムを動かす環境がボタンを押すだけで作れるようになり、一度決めた設定もボタン操作で変更できるようになりました。


例えばHDDが500GBサーバを買ったとしたら、これまでは変更することはできませんでしたが、クラウドならボタンを押すだけで1TBに変えることもできますし、SSDに変更することもできます。

メモリの変更もCPUの変更も簡単にできます。

テスト環境もクラウド上に作れますし、問題が起こったときに前のシステムに切り替えてその場を凌ぐことも簡単になりました。これまでベンダーがハードの調達に時間を掛けていた部分も短縮できますし、何より場所を必要としません。


管理コストも削減できます。システムのメンテナンスもクラウドの運営会社が行ってくれるので気にしなくても問題ありません。

なので、社内に複数人システムの知識を持った人間がいればベンダーを挟まなくてもシステム開発も可能な時代となりました。

これによってSIerは今危機にさらされています。クラウドによって開発期間が短縮されたということは、かかる人件費も安くなるということです。つまり、人件費で稼いでいるSIerは管理する時間が減り、売上も目に見えて減ってしまうわけです。

これまでの人月商売を脱することが今後の会社の成長に繋げるために必要になるでしょう。

まとめ

システムの費用はほぼすべて人件費です。そして今後はクラウドの登場でシステム開発は難易度が下がり、AIなどの分野に投資する費用が大きくなってくるのではないでしょうか!

基幹業務をシステム化するだけの時代は終わりを迎え、より付加価値が高いシステムが求められるようになってきました。今後、僕が働いているSIerはどうなっていくのでしょうか?

他人事ではないので、危機感をもって生きていかないといけないなぁと思っております。

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